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最近では、伊勢市内だけではなく四日市、津、松坂、鳥羽、志摩、尾鷲、熊野などからも診療はもちろん、セカンドオピニオンとして動物の眼科や皮膚科を受診してくださる飼い主様が増えております。その時に今までの治療内容や使用していたお薬がわかると診療がスムースになります。
 もし可能でしたらば、それまでの治療・薬などわかるものをご持参いただくか、かかりつけの先生からご紹介いただけますよう、宜しくお願いいたします。

診療カレンダー

  • ピンク色休診日です(臨時休診含む)
  • 午後の診療がお休です。
  • の日午前の診療がお休みです。

緑内障

こんな症状が出たら

主に以下のような症状で来院されます。
・目が痛そう
・元気がない
・目が赤い
・目が大きくなってきた(これは末期です)
                    など

 緑内障とは… 

早期発見早期治療!!まずはこれを知っていただきたいです。

緑内障とは、何らかの原因(下記で詳しく説明)により、右の図のように眼房水が過剰に溜まることによって、眼圧が高くなる状態のことです。

高い眼圧が持続することにより網膜の障害が起こり「視力が失われる」疾患です。       

緑内障の原因 

原発性緑内障と続発性緑内障の2つがあります。

・原発性緑内障は、遺伝の関与があると言われており、特定の犬種(柴犬、シーズー、コッカースパニエル、チワワ)において緑内障を多く診るのもこの為と考えます。

・続発性緑内障は、主にブドウ膜炎や水晶体脱臼が先に存在し、その結果2次的に起こることが多く、
 犬猫においては白内障の進行に伴いブドウ膜炎が起こり、緑内障へ移行することも報告されております。
     

診断について 

眼圧が最も重要な検査になります。正常な眼圧は、犬も猫もだいたい 16±4 以内(大型犬はこれより低い)です。これより明らかに高い数値の時に「高眼圧」と診断できます。最初に書いたように、緑内障は「早期発見・早期治療」です。原発性緑内障の場合には、できれば症状が出る前(眼圧が2528)に診断をしたいです。特に左の表にあるような犬種では定期的な眼圧測定をすることによって早期診断が可能になります。

しかし、続発性緑内障の場合には単純ではありません。特にブドウ膜炎が存在するときには、眼圧が低下してしまっておりますので、その評価は眼圧だけみると正常眼圧ですから、緑内障ではないという事になってしまい、診断はおろそかになります。ですから、いかなるときにも、基本的な検査はもちろん、スリットランプ検査などの検査も並行して行い、前眼房の状態や虹彩などを細かに観察する必要があります。

 もちろん、眼底検査も重要になります。この検査では視神経の状態や網膜の状態が把握できます。視神経乳頭と言われる部分が陥凹している場合には視覚はすでに失ってしまっております。
 
また、急性か慢性かの診断がとても重要になります。なぜかというと、治療方針が大きく変わるからです。 
 
急性なら、視覚が温存できる可能性があるので、緊急の処置が必要になります。各種検査結果から視力温存の可能性がある場合には、当院ではレーザー治療にて対応させて頂いております。
 
慢性の場合には今後をいかにコントロールするかが重要になるので、緊急性は低くなります。その子の辛さを取ってあげられる最善の治療について一緒に考えさせて頂きます。
 
この様に治療が大きく変わりますから、診断においては、眼圧が高い低いだけの診断ではなく、眼底検査を含めたしっかりとした眼科検査が大切になります。

模型での網膜剥離の説明
2010年3月メニわんセミナーの資料より)      

治療

緑内障の治療は現在の状態からの進行をできる限りくい止めるために、眼圧を低い状態にコントロールすることが重要になります。

その治療法として、点眼薬治療(状況により飲み薬も加えることもあります。)や、外科的治療があります。

 しかし、動物の場合は、飼い主が初期の変化に気づくことは少ないので、ある程度経過してから受診されることも多く、既に視力を消失している状態の慢性緑内障であることが多いです。

ですから、動物病院では人の場合と違い、急性緑内障と、慢性緑内障で治療の目的を分けて対応せざるを得ません。

急性の場合 → 視覚の温存

慢性の場合 → 疼痛の緩和

詳しくは、先ほど診断の所にも書いた通りです。

 

では、それぞれの治療についてご説明します。

内科(点眼)治療 

 まずは人と同じく、眼圧を下げるための点眼薬を使います。種類はいくつかあり、その子の状態と薬への反応によって使い分けます。最近では1つの目薬に2つの効果が入っているものもあり10年前に比べてかなり薬が良くなったように思います。

 また、目薬だけでは十分な効果が無い場合、点滴による浸透圧利尿治療や内服薬を併用することもあります。

 

ただ、犬の場合は来院される時点ですでに進行した緑内障あることが多く、徹底的な内科的治療をしても、早くて数週間、多くは1年以内にはコントロール出来なくなるケースを何例も経験しております。残念ながら実際その方が多いです。その場合は外科的治療に踏み切ります。

・外科治療 

視覚のある場合

1.レーザー毛様体光凝固術

視覚が温存されている原発緑内障の場合の選択肢の一つです。
この手術はレーザー照射を行い、毛様体色素上皮を凝固壊死させることで、房水の産生を抑えます。眼球を切開することなく、短時間(20~30分ほど)で終わり入院の必要もない、経強膜レーザータイプと、眼球を切開して、毛様体を直接見ながら定量的に凝固を行う眼内レーザータイプの2種類があります。

 近年では眼内レーザー(ECP)処置がレーザーを定量的に照射できることなどから成績が向上している。しかし、特殊なシステムで眼科専門施設で行われている。当院では経強膜レーザータイプのみ対応しております。経強膜は簡易的であり麻酔時間が少なくてすむ利点はありますが、治療効果が安定しないので、十分なお話し合いの後でこの処置を行っております。

治療前

治療後

2.前房シャント挿入術

こちらも視覚が温存している原発性緑内障の場合に施術を検討しております。

 特殊なバルブの付いた右の写真の物を白目の部分の奥に設置して、前房内の水をそこに排泄するシステムです。
術後はかなり厳密な管理が必要であり、チューブ内が詰まることもありますので、再手術になる可能性が高い事もご理解いただきたいです。
しかし、近年の報告では柴犬では術後の成績が良く、当院でも柴犬では右の写真のように比較的長期に視力を保てております。

視覚がない場合

1.ゲンタマイシン(シドフォビル)硝子体内注入術

2.シリコンボールインプラント眼内挿入術

この手術は慢性緑内障の末期で、既に視力を失っている場合におこなう手術です。

どうしても目薬やレーザー治療に反応してくれないケースでは、どんどんと目が飛び出すほど大きくなる「牛眼」や、逆に眼球がじわじわと小さくなってしまう「眼球ろう」という状態になってしまいます。これらの状態になる前に眼球内にシリコンインプラントを挿入する手術です。眼球内部のみをシリコンボールに入れ替えるので、この写真のように見た目に健康な時とほとんどわかりません。そのうえ、今までの永続的な点眼薬や、痛みからも解放してあげることが可能な手術です。多くのワンちゃんが元気に動くようになったお聞きします。

一昔前は眼球摘出術しか行えなかったのですが、この手術が出来るようになってからは、多くの患者様に受け入れていただいております。      
柴犬 7歳 
この子は両目とも同時に行いました。
炎症のひどかった左眼の方が若干灰色えすが、パッと見では手術したことに気が付かれないそうです。
MIX 8歳
この子も両目とも同時に行いました。
やんちゃで、草むらに突っ込むので散歩の時だけエリザベスカラー装着だそうです(笑)。それくらいお元気に散歩に行けるほどでうれしいです。

ダックス 9歳
この子は黒い方が施術した方です。
白い方のが目立つように見えるほどなのがお分かりになると思います。白内障の末期に水晶体が脱臼してそのままでいたために失明し、この手術となりました。      

 最後に… 

犬の緑内障は若い柴犬で多く、失明に至るので、犬の事を思うと決してあなどれません。

さらに、犬は初期の病態であっても、何の変化も見せないので、飼い主様が、「何かおかしい?」と感じて、病院へ連れて来た時にはすでに、重度なうえに、緊急処置や手術になる事もしばしばです。

初期であれば、目薬による内科的管理で落ち着かせてあげることもある程度可能です。

ですから、日頃から、定期的に病院へ来院し、高齢期になったら、特に先ほどの表にあるような好発犬種においては、年に数回の眼圧検査を実施し、初期に気づいてあげることがとても重要です。

その為にも、仔犬のころからの顔周りの触られることに慣らしておいてあげることが、目薬をするにおいても、眼科の検査をするにおいても、ベースとして必要になります。

ですから、こんどう動物病院では「犬育て」を重要視しております!!もちろん、成犬になっていても、まだ間に合いますよ♪

さあ、今からトレーニングして、緑内障の早期発見、早期治療を目指しましょう!!