「疥癬」という目に見えないダニによる、皮膚の激しい痒みを主訴とするイヌでもネコでも見られる皮膚病です。
痒み以外の皮膚の症状が出ないことも多いので、アトピーやアレルギーと間違われることも・・・。
この地域では、自然豊かなために、たぬきなどの野生動物から、疥癬がうつるケースが多く認めております。
人にうつることもある、『人獣共通感染症』ですので、人にも痒みが出た場合は速やかに、医療機関にいかれてください。
疥癬虫(ヒゼンダニ)という目に見えない小さいダニが、皮膚に寄生することで、激しい痒みを引き起こします。
結果的に、毛をむしる、皮膚を掻き壊すなどの症状が見られます。
この地域では、「たぬき」が多く、民家に巣を作っているケースもあり、「たぬき」からの感染が考えられております。
人に、一時的にうつる事もあります。特に、犬と濃厚に接触する人や、免疫が弱くなっているお年寄りや小さなお子さんでは注意してください。
顕微鏡で見られる「疥癬虫」
図のように、イヌ疥癬の場合は、ピンクから赤にかけて痒みが強く見られます。
特に、『肘』、『耳』、『かかと』の部分のしつこい痒みがある場合はこの病気を疑います。
疥癬症を起こしやすい場所。
特に、肘や耳の痒みが強い子が多いです。
もちろん、疥癬虫を見つけることが出来たら、確定診断になるのですけど、教科書的にも、犬の疥癬の検出率は、10~20%程度ですので、
見つからないからといって、この病気を否定はできないのです。
ですから、当院では、上記の皮診分布と、臨床症状、ステロイドへの抵抗性の痒みがある場合、本症を強く疑い、
試験的投薬を行い経過を飼い主様にお伺いしています。
肘の病変
疥癬は、寄生虫なので、寄生虫駆除剤を使います。基本的に5日~10日に一回です。
その子、その子の状態により、薬は使い分けております。
また、舐め過ぎたり、掻き壊してしまっていたりするので、同時に抗生剤を投与する事が多いです。
寄生虫が居なくなると痒みは止まるので、痒み止めは、基本的には使いません。
しかし、疥癬虫に対してのアレルギー応答が疑われる症例においては、ステロイドも同時投与していかなくてはいけません。
後ろ足の病変。口でなめたり、
むしった後が痛々しいです・・。
ネコでは、写真のような、特徴的な、「ガビガビ」皮膚状態が特徴で、
ネコの疥癬虫(ネコショウセンコウヒゼンダニ)は、簡単に検出できるので、診断も容易です。
治療は、犬と同じです。
ただ、子猫以外で、ここまでひどくなる時には、背景に、腎不全、猫エイズなどの基礎疾患を抱えていることもあるために、単純に治療に踏み切る前に、全身の検査をお勧めしています。
ネコの特徴的な、「ガビガビ」状態。
痒みよりも、こうした皮膚状態が特徴。