「うちの子…遊んでるとおもちゃじゃなくて、手を噛んでくるのよね。」 「急に飛びついて噛んでくるし…」 など。こ~んなお話を診察室でよくうかがいます。 皆さん!知ってましたか? 仔犬に《食欲》があるのと同じように《噛みたい欲求》もあるのです。 それは、仔犬同士や母犬と噛み合って遊びながら噛む行動のコントロールを学ぶ事や 何でも口に入れて噛み、噛む力を身につける事や噛む事で脳を発達させる事などがこの時期に必要なんです。 噛むのは悪い事だと無理にやめさせると、欲求が満たされずにストレスに…。 仔犬が噛みたがるのは成長の過程として受け入れ、噛みたい欲求を別の方法で満たしてあげる事が大切です。 あ…受け入れると言っても、放っておくとは違いますからね。 噛まれても可愛いからついつい許してしまう…。噛まれると痛いから怒ってしまう…。など、 どうしても人間側の都合で物を考え、対応していませんか?また、甘噛みって仔犬の時だけでしょ?と思われがちですが、いやいや…そんな事はありません。習慣化してしまうと成犬になっても噛む癖がつくんですよ。 噛む癖がついたら大変…。 例えば、お手入れをしようとして『カプリ…』、友達が遊びに来て「可愛い~」の後に『カプリ…』、病院での治療の時に『カプリ…』 これでは、一緒に楽しい生活とは言えないですよね? こうならない為にも私達がまず理解して、わんちゃんに教えてあげましょう! |
何故、噛むのか?実は、彼らにも理由があるのです。さぁ、勉強していきましょう!
① 好奇心旺盛で何でも口にしたいから!
噛んで楽しいと感じたものを選ぶようになります。例えば…人の手や足、家具、電気コードなど。
口にしてみて、噛めるもの?食べられるもの?と、覚えていくんです。
噛み心地がよかったり、飼い主さんの反応が楽しかったりと覚えていく理由はさまざま。噛んでみて楽しかったと
思ったものを噛むようになるんです。でも、この好奇心は脳の発育に欠かせないものなんですよ。
実は、犬の好奇心は3歳くらいで(日本犬は1歳を過ぎる頃)落ち着くと言われています。
なので、それまでは脳に刺激が必要なのでしょうね。
② 狩猟本能がウズウズするから!
動くものは何でも獲物!?ターゲットはやはり私達、人の手・足ですね。
《獲物を追いかけ、噛み付いて仕留める!》行動は、犬が本能としてもっているものです。なので、仔犬が動くものを追いかけて噛むのは、本能のままに狩りの練習をしているからなんです。そして、痛がっている飼い主さんの反応も楽しんでいるんですよ。
③ 歯の抜け替わりでムズムズするから!
生後3週間~7・8ヶ月は乳歯が生え、さらに乳歯が永久歯に生え変わる時期でもあります。
この時期は、歯ぐきがムズムズして何かを噛みたくなるそうです。噛むとむず痒さが解消できるのでいろんな物を
噛むんです。
知っていましたか?面白がって噛んでいるの事もあるんですが、この様に理由があるのです。
これを理解してあげた上でわんちゃんに接してあげてくださいね。
《噛み加減を教えよう》
仔犬同士の噛み合いで学ぶ事は噛み加減です。仔犬の時期に噛みの抑制を学ぶ事が、
その後に噛みの問題を深刻化させない事に繋がると言われています。
まずは、犬をリードにつなぎ練習スタートです。
Let's! 噛み加減は3段階で教えよう!
①始めは《強く噛んだら・本当に痛かったら》
②強く噛まなくなってきて《噛んだら》
③歯があたったら
噛んできたら、絵の様にリードが届かない所まで離れます。大人しくなったらすぐ近づきます。
①②までを4ヶ月半までに覚えさせる(教えてあげる)と成犬になってからの深刻な噛みの問題が起こりにくいと言われています。
《対処法パート①》 ~甘噛みした時はどうしたら?~
①
どこでもいいので、まずリードでつなぎます。
②
つながっている状態でかまってあげる。
③
しばらくすると…興奮し噛んできます。
その時は『イタッ』と大きな声ではっきり短く言います。
④
しばらくすると…興奮し噛んできます。
その時は『イタッ』と大きな声ではっきり短く言います。
ほめるタイミングは諦めてからでもOKですが、噛むのを止めた瞬間が良いです。
すぐにまた噛んできますが、無視をし、噛むのを止めた瞬間にほめる!!を繰り返します。
数十回の繰り返しで、やっと噛むと損するみたいだと理解し始めます。
《対処法パート②》 ~甘噛みしたらどうしたら?~
①
手や足を噛まれたら『痛い!』とキッパリ大きな声で短く言いましょう。
犬にハッとさせてあげて。
②
手を引っ込めて、動きを止めて無視。
この時に、チラチラ犬の方を見たり、『もう!痛いじゃない!』なんて声をかけてもいけません。
完全に無言でお願いします。
《噛む=無視される(イイことがない)》と教えてあげることが大切。
③
無視をしていて、犬が落ち着いたか確認する。この確認もクールにお願いします。
④
噛んでいいおもちゃを取り出します。
すぐ出せる様にポケットなどに入れておくといいかも。
⑤
ゴム製のおもちゃやロープがおススメ。
関心と欲求のごほうびとして、噛みたい物を与えます。
【マズル(鼻)をつかむ】
顔を触らせてくれなくなります。人の手が嫌いになったり、体を触らせてくれなくなって
しまいます。恐怖や興奮が高まって、飼い主さんを噛んでしまう事もあるので注意です。
【 口に手を入れ返す】
この方法も、①と同じで人の手が嫌いになり、手が近づくと『何か嫌な事が起きるかも!?』
と犬が疑う様になります。
【 大げさに痛がる 】
キャーキャー騒ぐと犬が遊んでくれてると間違えるので逆効果…。
犬は人の反応を見て
面白がっているんですよ。
【 逃げる 】
追いかけたくなってもっと噛んでしまうかも。
犬の狩猟本能を刺激するため、より興奮して噛んできてしまいます。
『キャー』などと騒げば犬はさらに楽しくなるので大興奮!
【 体ひっくり返して叱る 】
お腹を見せるのは、自らとる服従のポーズ。
悪い事をしたと思っていないのに無理矢理、服従させられた…という経験から、犬は飼い主さんを信頼しなくなります。
① 噛んでいい物を与える。= 噛む欲求を満たす。
<噛ませないのではなく、適切なものを噛ませる>
噛むことはいけないことだと思い、噛んでいい物すら与えないでいると、〝噛みたい欲求〟が強い仔犬は欲求不満になります。
中には、自分の体を噛むことも。そうならないために、噛んでいいおもちゃなどを与え、噛む欲求を満たすことが大切です。
② 人の手は噛んではいけないと思わせる。= 人の手を噛ませない!
<甘噛みだからといって、手を噛むことを習慣にさせない>
手は噛んでいい物と認識してしまうと、日頃のお手入れやリードの付けはずしがスムーズにできなくなります。
しかし、手からおいしいもの(フードやおやつ)が出てくる経験をするうちに、手は「噛んでいい物」から「おいしいもの」へと変化し、次第に手を噛まなくなります。
③ 噛まれて困るものには近づかせない。= 噛む経験を減らす!
<噛まれて困るものには、近づかせない>
愛犬に噛んで欲しくないものはなんですか?
一度、噛んで欲しくないものを書き出してみてください。噛んで欲しくないものには近づけないように柵を立てたり、用事がある時はゲージに入れておくなどして、
噛ませない環境づくりをしましょう。
④ 散歩途中で遊びを取り入れる。= 噛むエネルギーを別の方法で発散
<噛むエネルギーをおもちゃで満たしてあげる>
家の中で〝噛みたい欲求〟を満たすことはもちろんですが、おもちゃでエネルギーを発散して、噛みたい欲求をを減らすこともできます。(刺激的な環境を用意する!例えば、ディズニーランドの様なおもちゃいっぱいのケージにするなど)
効率良くエネルギー消費する工夫をして、散歩の途中でおもちゃを使って遊んだり、小走りに散歩したりするといいでしょう。
~まとめ~ たくさん、たくさんお話しましたが…知っていただきたかったのは犬には『噛みたい欲求がある』と言うこと。 そして、何がなんでも噛んではダメ!と教えるのではなく、噛んでいい物とダメな物。また、噛む強さを教え、噛む事をクセにさせない。 という事をどうやって教えればいいかを、上記の様にまとめてみました。 必ずこの方法で上手く!と言うのは難しいですが…少しでも、多くの悩める飼い主さんの力になればなぁと思います。 |
Q 甘噛みする人を選ぶのはどうして?
私だけ噛まれる…とか、お兄ちゃんだけ噛まれる…なんてことありませんか?
実は、犬にとっておもしろい反応が得られる人だけに甘噛みをする犬もいるんです。
犬は「その人を噛めばかまってもらえる、何かしら反応してくれる」と知っているのです。
なので、家族の対応を統一することが大事なんですよ。
そこのお父さん!犬を叱りつけてはダメですよ?子供たちへ対応の仕方を教えてあげてくださいね。
Q 噛んではこないけど『ウゥ~ッ』って言うのはいいの?
一言で言うと…ダメです
鼻にしわを寄せて歯を見せてうなるのは、甘噛みというより、本気噛みの前ぶれ…。
ひどい様なら(少しでも近づいて『ウゥ~』って言うのであれば)動物病院やインストラクターに相談するの
をおススメします。
監修:DINGO認定インストラクター 山越 哲生