暗い部屋では動かない。夕方の散歩で歩かなくなった。など。
原囚不明の遺伝性疾患で、網膜機能が進行性に障害され、視覚低下し失明に至る疾患です。
疾患初期には網膜タペタム領域周辺部より進行性に反射亢進像、血管狭細化や脈絡膜明瞭化が認められるため広い視野でのスクリーニングが重要となります。
私達人間とは違い網膜にタペタムをもつ夜行性動物では、網膜視細胞の大部分が暗いところでも見える細胞から構成されています。従ってこの疾患の特徴として、まず夕暮れや夜間などの暗闇での視覚低下から発現します。さらに進行すると、昼間や明るいところでの視覚も低下し、やがて失明します。
多くが6歳齢前後で認められますが、早い場合は生後数ケ月からはじまり、2歳までに失明します。
初期は、暗い場所での視覚低下が起こりますが、明るい所では問題なく行動しているので多くの飼い主はこの時点では気づけないでしょう。
中期以降の明るい所で視覚障害があっても、記憶・嗅覚・聴覚・触覚や適応力により、やはり飼い主には気づかれにくいようです。
来院時に簡単なスクリーニング検査と明所と暗所での行動に違いがある場合には網膜検査を実施すると早期発見につながります。
眼底検査をしている所
本邦ではミニチュア・ダックスフンドが最も多く見られますが、 トイ・プードルでも多く認められているため、このような犬種においては、来院時のスクリーニング検査が 早期発見につながります。その他にはヨークシャー・テリア、アメリカン・コッカー・スパニエル、ミニチュア・シュナウザー、 チワワ、パピヨンなどです。
正常な眼底像
現在の獣医療では、残念ながらこの疾患に対する治療薬や手術はありません。
人医を含めて最近注目されているビタミンE、アスタキサンチンなどの抗酸化剤や犬用サプリメントがあります。これらは、網膜組織が酸化することにより進行していく網膜変性を遅らせるのではないかと言われています。
また、どうぶつ眼科領域では1980年代にビタミンE欠乏による網膜変性が多く報告されていることから、世界各国で網膜疾患に対しいろいろなビタミンE含有動物用抗酸化剤が使用されています。
このような経緯から、早期治療にはビタミンEを含むサプリメントをお勤めしています。
好発犬種(特にM,ダックス)では、年に1回の定期検査をお勧めします!! お気軽に診察時に聞いてください。
実は、この病気が進行すると、白内障になる子がいます!!
そして、白内障の進行により水晶体起因性ぶどう膜炎⇒続発性緑内障(⇒水晶体脱臼)
と悪化することがあるので、「治療が無いからなぁ。。」 と、来院を辞めてしまわずに、
この病気だからこそ、定期的な診察をお受けください。
*この場合には視力回復が見込めないために、基本的には白内障の手術は不適応となります。
PRA後期に発生した白内障のワンちゃん